48Hvで加工による相当ひずみの導入で大きく硬化している。これらの初期硬さは時効温度が高くなるとその変化は大きく、通常の時効温度では、HPT加工材は大きく低下し、10ks(〜2.7h)後では硬さは溶体化材や圧延材に比べて低くなり逆転してしまう。注目すべきは、HPT材の硬さは343Kの時効温度で僅かではあるが、時効硬化(10Hv程度)することである。すなわち、HPT加工後の高強度状態を保持したまま、時効処理で硬化させるには時効温度を低下させることが重要な要件となる。 時効前と443Kで86.4ks(24h)時効処理した時の各試料を透過電子顕微鏡で組織観察した結果を図2に示す[10]。図2(a)-(c)が時効前で、(d)-(f)が時効後の組織となる。時効前の溶体化材では転位がほとんどなく(a)、圧延後は多数の転位が観察され(b)、HPT材では強加工材特有の非平衡粒界(コントラスト変化が不明瞭な湾曲粒界)で囲まれた微細な結晶粒が観察される(c)。時効後は、溶体化材では平均長さ約35nmのナノサイズのβ”相粒子が粒内に多数観察され(d)、圧延材ではβ”粒子はロッド状で不均一に形成し(たとえば、(e)での矢印)、HPT材では数百nmサイズのβ-Mg2Si相粒子(たとえば、(f)での矢印)が観察される。図1(d)で見る硬さの違いはこのような組織の違いが反映されていて、HPT材が硬さは最も低い状態となっている。 図3は、室温6GPaのもと5回転のHPT加工でA6061合金(0.96%Mg,0.59%Si,0.29%Cu,0.29%Fe,図2A6022合金の溶体化材、圧延材、HPT材のそれぞれ時効前(a,b,c)と、443Kで86.4 ks(24h)時効後(d,e,f)の透過電子顕微鏡組織 [10]図3HPTで5回転加工したA6061合金を373K, 423 Kで時効した時の硬さ変化。溶体化材(ST)の時効曲線も含む。[13]
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