50右側が暗視野(DF)像、中央が制限視野回折パターン)である[13]。観察は、(a, c)HPT盤状試料中央部で相当ひずみ1の個所と(b, d)その盤状試料端部で相当ひずみが12の個所で行ったものである。いずれの個所も、15minと64hで時効時間が大きく異なるにもかかわらず結晶粒の粗大化は生じていない。 図6は時効に伴う結晶粒径とともに、X線プロファイルよりWilliamson–Hall法を用いて求めた転位密度の変化を示している[13]。結晶粒径はほとんど変化なく転位密度は減少しているにもかかわらず、硬さの上昇がみられているのは、図7に模式的に示すように、析出に伴う硬さ増加が転位密度の減少に伴う硬さ低下を十分に補って強化に寄与していることを意味する。図5の透過電子顕微鏡組織では、析出粒子は分解能が十分でなく確認されないが、図4(b)に示す硬さ増分の違いやピーク出現時間はこのような転位密度の時効に伴う強度減少と時効析出に伴うピン止め粒子の生成とのバランスにより生じるものと考えられる。 寺田らは、A6061合金をARB(Accumulative Roll Bonding)で6サイクル加工し、その時効性を調べた。溶体化材と同様の良好な時効性が得られることを報告している[14]。2-1-2 Al-Cu系合金 図8はAl-4mass%Cu合金を823Kで5h溶体化処理しHPT加工を6GPaで5回転施した試料の時効挙動を調べた結果である[15]。溶体化材の時効結果も含めて比較している。時効温度は室温(298 K)と353Kである。HPT材では、いずれの温度も時効により硬さが増加することが確認される。ピーク硬さは室温時効の場合1.4days後に、353 Kでは5min後に到達し、時効温度が高くなること図6HPTで6GPaのもと0.75回転したA6061合金の373Kで時効したときの硬さ、結晶粒径、転位密度の変化。[13]図7時効に伴う硬さ変化と、硬さ変化に及ぼす析出粒子、結晶粒径、転位密度の影響。図8Al-4mass%Cu合金の溶体化材およびHPT材(6GPa, 5回転)の室温(298K)と353Kにおける時効に伴う硬さ変化。[15]図9Al-4mass%Cu合金の溶体化材およびHPT材(6GPa, 5回転)の室温(298K)と353Kにおける時効に伴う硬さ増分の変化。[15]
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