公益財団法人 軽金属奨学会 設立60年史
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51した時のTEM組織を示す[15]。図10では、左側が明視野像(BF)、右側が暗視野像(DF)で、中央に制限視野回折パターンを示す。結晶粒径はそれぞれ、210, 210, 260, 390nmと時効時間が長くなるにつれて増大する。図10のTEM組織では析出粒子の確認は難しいが、図10(d)では 球状粒子(矢印)が粒内や粒界上に観察される。制限視野回折により解析した結果を図11と図12に示す[15]。それぞれ、353Kで20minと5days時効した時の明視野像(BF)、暗視野像(DF)、制限視野回折(SAED)パターンである。図11の暗視野像中のA, BはそれぞれSAEDパターン中の回折波A, Bで撮影したものである。Aの暗視野像はAlマトリックスの基本反射で撮影した微細結晶粒で、BはAl2Cu(θ)相の規則反射で撮影した析出粒子の暗視野像である。微細結晶粒中に平衡相が数十nmのサイズで存在することになる。図12でピーク硬さまでの時効時間が著しく短縮される。溶体化材でも硬化が確認されるが、硬さの上昇は約2days経ってからとなる。HPT加工することで、溶体化材に比べて硬さが3倍近く上昇し時効速度が非常に速くなる。 図9に時効による硬さ増分をプロットする[15]。HPT材では室温時効も353K時効も10Hv程度の増加で違いは見られないが、溶体化材では353Kが大きくなり、硬さ増分は20Hvを超えることになる。HPT加工した場合、時効硬化能は減少することになる。 図10はAl-4mass%Cu合金を室温6GPaで5回転HPT加工した(a)直後のTEM組織と、353Kで(b)5min、(c)20min、(d)5days間時効図10Al-4mass%Cu試料を室温6GPaのもと5回転HPT加工した(a)直後のTEM組織と、353Kで(b)5min、(c)20min、(d)5days間時効した時のTEM組織。左側:明視野像、右側:暗視野像で、中央:制限視野回折パターン。[15]図11HPTで6GPaのもと5回転したAl-4mass%Cu合金を353Kで20min時効したときのTEM組織。 [15]図12HPTで6GPaのもと5回転したAl-4mass%Cu合金を353Kで5days時効したときのTEM組織。 [15]

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