65の発生原因についてさらに検討を行うことを今後の課題としていた。 そこで、Si量の影響について焦点を絞るため、6022合金に加えAl-Si系2元合金をモデル材として使用し、Si量を0〜12 mass%まで変化させた合金の縦型高速双ロールキャスト材を作製し、Si量のみならずロール周速、凝固距離、初期ロール間隙、バネ荷重等の各鋳造条件がロールキャスト材の板厚や板厚方向の凝固組織変化、板厚中央部の鋳造欠陥の分布と内部割れ発生の有無に及ぼす影響について詳細な検討を行った。その結果、固液共存温度範囲が最大となるAl-2%Si合金で内部割れが多く発生するのはロールギャップ通過時に板厚中央部に残存する液相の量とその分布に依存していること、よって、内部割れを抑制するには、ロール荷重を大きくして、ロールギャップ通過時の冷却速度を高めて残留液相を減少させることが有効であることを明らかにした。 また、Al-2%Si合金をモデル材とし、板表面の性状、すなわち不規則あるいは周期的に生じる表面模様や表面割れの発生原因やその抑制方法について検討を行った。板表面には金属光沢を有する部分と灰色にくもった部分が現れることが多く、灰色にくもった部分ではSi組成が高かった。模様の形態と板厚の関係を調査した結果、不規則な模様は板厚が安定しない場合に生じ、これは鋳造時の溶湯ヘッドの高さの変動と関係していることを明らかにするとともに、板表面の高Si濃度領域は、凝固時の板内部からのSiの浸み出しによる逆偏析が原因であることを明らかにした。なお、現在は高速双ロールキャストしたAC4CH合金、Al-5%Mg合金板材の表面模様の発生原因の究明に取り組んでいる。3.3 縦型高速双ロールキャスト法による鋳物・ダイカスト用合金の靱性向上と成形性の付与 [8-12] 通常、展伸材用アルミニウム合金スクラップは鋳物・ダイカスト用合金へとカスケードリサイクル(ダウングレードリサイクル)されている。そこで縦型高速双ロールキャスト法の優れた急冷凝固能を活用し、これとは全く逆に鋳物・ダイカスト用合金を展伸材用合金へとアップグレードリサイクルすることができないかと考え、いくつかの主要な合金について実証実験を行った。まず、鋳物やダイカスト材の靱性を評価するために、KIC試験法よりも簡便で、薄肉の鋳物・ダイカストにも適用可能な引裂試験法に着目し、その評価方法についても研究を行った。この成果をまとめた論文は、日本鋳造工学会優秀論文賞を受賞した。 さらに縦型高速双ロールキャスト法により代表的な汎用ダイカスト用合金であるADC12合金に含まれる多種多様の板状や針状形態の分散粒子を微細球状化することができ、これにより本合金の靭性が6倍向上し、かつ曲げ加工性ができるようになった。さらに亜共晶組成のAC4CH合金はもとより、多量の初晶Si相粒子を含む硬くて脆い過共晶組成合金にも成形性を付与することに成功した。3.4 タンデム式縦型高速ロールキャスト法によるクラッド材の省工程・省エネルギー製造プロセスの開発 [13,14]3.4.1 アルミニウム合金クラッド材の省工程・省エネルギー製造プロセス開発の意義 縦型高速双ロールキャスト法の応用として、クラッド材のin situ製造プロセスが挙げられる。これは縦型ロールキャスターを縦方向に複数台設置し、これにより芯材となる合金を異種合金の皮材で挟んだクラッド材を1工程で製造する方法である。熱延法と呼ばれる通常のクラッド材製造法に比べ、大幅な省工程、省エネルギーが実現できる。本プロセスによれば、急冷凝固により溶融合金から微細な組織を有する合金を直接製造できるため、熱延法で
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