70から電子線を入射した際の電子回折図形、図9(c)は芯材内Bで得られた電子回折図形である。両者は同じ面指数を呈し、かつ回折強度も同等であったことから、AとBは同一方位を有していることがわかる。これは芯材表面の各結晶粒の方位を引継ぐようにして層状領域が成長したことを示唆している。 次に接合界面の酸化被膜の有無について考える。アルミニウムは酸素との化学親和性が良いので、大気にさらされると表面には数nm程度の薄い自然酸化被膜ができることが知られているが、第1双ロールで作製された芯材が第2双ロールの溶湯に浸漬するまでの間、芯材の表面が大気にさらされる時間は約0.5sであり、TEMによる電子回折図形にも酸化被膜の存在を示すハローパターンは認められなかったことから、酸化被膜は芯材と皮材の界面には存在しないと考えられる。⑹ 冷間圧延後の断面組織と冷間圧延材の力学的性質の比較 熱延材と双ロール材を板厚6.0mmから0.17mmまで冷間圧延した試料の結晶粒組織を図10に示す。クラッド率は変化していない。熱延材は板厚6.0mmのときと同様、繊維状組織を呈していた。一方、双ロール材は冷間圧延により繊維状組織へと変化していた。図11はSEM-BEI像である。皮材には共晶Si粒子が、芯材にはAl-Mn系粒子が分散しているが、双ロール材の方がそれらは微細かつ均一に分散していた。さらに、熱延材の接合界面では、皮材の4045合金母相と芯材の3003合金母相のコントラストに差がなく、区別できないのに対し、双ロール材では、両者の間に明瞭なコントラスト差が認められた。これは双ロール材の凝固時間が極めて短いため、両合金成分の拡散が抑えられたためであると考えられる。引張試験の結果、熱延材の引張強さ、0.2%耐力、破断ひずみは、260MPa、230MPa、0.046、双ロール材は、260MPa、240MPa、0.039でほとんど同じであった。⑺ 400℃、2h焼鈍し後の断面組織と力学的性質の比較 図12に代表的な応力-ひずみ曲線を示す。熱延材の引張強さ、0.2%耐力、破断ひずみは、120MPa、53MPa、0.14、双ロール材は、150MPa、82MPa、0.19であった。図13はこれらの結晶粒組織である。熱延材は再結晶粒組織を呈していた。一方、双ロール材では再結晶粒組織と繊維状組図10 冷間圧延後のクラッド材(厚さ0.17mm)の結晶粒組織 (a)熱延材,(b) 双ロール材図11 冷間圧延後のクラッド材(厚さ0.17mm)のミクロ組織(SEM-BEI像) (a),(b)熱延材,(c),(d)双ロール材図12 焼鈍し後のクラッド材(厚さ0.17mm)の応力-ひずみ曲線
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