公益財団法人 軽金属奨学会 設立60年史
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72厚0.17mmから0.10mmまでの冷間圧延により、導入された加工ひずみ量は同等であり、その後の熱処理条件も全く同じであったためであると考えられる。⑼ まとめ 縦型高速双ロールキャスト法では、熱間圧延接合法に比べ大幅な省工程、省エネルギーが実現できる。本手法によれば、急冷凝固によって溶融合金から微細組織を有する芯材、皮材からなるクラッド材が直接製造できるため、熱延法では避けられない接合界面における反応や合金成分の拡散が防止でき、分散粒子の粗大化も抑制できる。また、ここで用いた芯材と皮材、各合金の組成や圧下率、焼鈍し条件、ろう付加熱条件は、すべて汎用的な熱延材において最適となるよう定められたものである。本研究では、その条件における双ロール材の組織や特性を評価したが、双ロール材には双ロール材に最適な芯材、皮材の合金組成や圧延、焼鈍し、ろう付条件があると考えられる。よって、双ロール材に最適な条件を見出すことができれば、熱延材以上に優れた力学的特性を有するクラッド材を得ることができる可能性がある。さらに縦型高速双ロールキャスト法の優れた冷却能を活用すれば、従来使用できなかった組成の合金も芯材や皮材として使用できる可能性もある。いずれにしても現時点において、すでに極めて省工程なプロセスで熱延材と比肩し得る力学的特性を有するクラッド材の作製に成功しており、「タンデム式縦型高速双ロールキャスト法」はアルミニウム合金クラッド材を作製するための新しいプロセスとして有用であると言えよう。4.おわりに 以上、課題研究終了後の成果について、研究の方向性別に紹介した。2.2の課題研究終了時で挙げた今後の課題については、ほぼ解決できたものもあるが、その多くについては現在も引き続き検討を行っており、今後新たな展開が期待できる。 多くの方が、表面性状に優れた幅広の板が縦型高速双ロールキャスト法を用いて、より大量に製造できるようになればよいとお考えであろう。しかし、そのための技術開発は一大学の研究室で遂行できるテーマではなく、産学連携やいわゆるナショプロレベルの研究・開発体制で臨む必要がある。また、材料の「つくりこみ」という観点からは、現在のDC鋳塊の製造、熱間圧延、冷間圧延、各種熱処理を経て製造される板材に比べはるかに省工程であるため、本手法で製造される合金板材に、従来材と同等な特性を求めるのは現実的な目標設定ではないと思われる。鋳造が難しい展伸用合金、急冷効果による溶質元素の強制固溶が有効な展伸用合金、薄板、箔としての用途が大半を占める展伸用合金、そして界面反応を可能な限り抑えたクラッド合金、このような従来法では実現が難しい材料の製造に目標を絞ってこそ、本プロセスの強みが発揮できるのではないだろうか。 一方、鋳物・ダイカスト用合金の展伸材用合金へのアップグレードリサイクルは、本プロセスを有効利用できる典型的な例である。鋳物・ダイカスト用アルミニウム合金に成形性を付与し、またその強度や靭性をさらに高めて、従来展伸材しか用いられていなかった用途にも使用できるようにすれば、展伸用、鋳物・ダイカスト用という垣根を越えたバリヤフリーな合金選択が実現するであろう。縦型高速双ロールキャスト法の長所・短所をよく理解し、その天分を活かすことが重要である。 最後に、縦型高速双ロールキャスト法に関する研究によって、この10年間の間に、徳田健二氏(神戸製鋼所・社会人プログラム)、金 民錫君((現)KIMS(韓国))、下坂大輔君((現)日本軽金属)、中村亮司君((現)リョービ)の4名の学生が博士

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