公益財団法人 軽金属奨学会 設立60年史
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77年から様々な運動を展開してきている。土木と言えば、鉄とコンクリートが常識であり、アルミニウム土木製品や構造物はなかなか採用してもらえなかった。アルミニウムは繰り返し、リサイクルができるという特徴を生かして、持続可能な社会形成に貢献できるのではないかと考え、まずは国土交通省及び地方整備局を回って、アルミに対する理解を深めてもらう活動を行っている。地方整備局の道路などを所管する課の長が、「アルミは高くて弱い」というイメージを今でももっているようで、この考え方を払拭してもらうことが最も大切だと考え、例えばアルミニウム防護柵に対する実車衝突実験のビデオや全国の施行例などを示しながら、丁寧に説明を行ってきており、その成果に期待したい。 そもそも、アルミニウム圧延業は製錬業と最終製品の加工産業との中間に位置し、素材や部材を提供する産業であり、日本の製造業を支える重要な役割を担っている。しかしながら、地金価格は、LMEで決まり、それに上乗せされるプレミアムが高騰し、さらに電力料金やエネルギー価格が上がるなど、材料費は高くなる一方、川下の顧客側からはさらなる値下げを要請され、僅かばかりのロールマージンで利益をあげにくい構造となっている。1.3 海外進出の動き 日本の国内市場は、少子高齢化のもと規模が縮小しており、今後飛躍的な増大は見込めない。国内市場だけを相手にしていては、今やグローバルな競争に打ち勝つことができないため、製造業各社は生き残りをかけ、ボリュームゾーン等を狙って海外に進出している。 日本のアルミニウム産業に携わる各社も顧客の海外進出に合わせる形で、或いは市場そのものをねらって進出している。 例えば、大手5社では日本軽金属(含:東洋アルミ)が中国には次のような進出をしている。長春市:鉄道車両用アルミ部材、山東省:自動車関連部品等、上海市:板圧延や押出加工、深セン市:押出材、広西壮族自治区:高純度アルミ地金、湖南省:アルミパウダー、広東省:アルミペースト。UACJは江蘇省で熱交用アルミ加工に、広東省で箔材等に、また天津市で熱交用押出材に進出している。また、同社はタイに板圧延工場を建設しているのが大きな動きとして注目されている。昭和電工は、中国の江蘇省に高純度コンデンサ箔で、また大連市にED管で、またベトナムではアルミ製缶メーカーを買収している。神戸製鋼は中国の江蘇省で自動車用アルミ鍛造材、また天津市で自動車用アルミパネル材で進出している。三菱アルミは、中国江蘇省及びタイで押出熱交材に進出している。 このような海外進出によって、海外における生産や出荷数量も無視できないぐらい大きな割合となっており、協会が発表する生産・出荷統計も国内分しか含んでいないので、いずれ統計の取り方を見直しせざるを得ない時期がくるものと思う。2.世界の動き2.1 世界の需給 世界のアルミニウム新地金の需要は1970年(昭和45年)の約1千万トンから2014年(平成26年)には5千万トンにまで増加している。先進国においては、需要の伸びはあまり見られないが、新興国における需要の増加が著しい。生活が豊かになるにつれて、住宅、電気製品、或いは車に対するニーズが増え、それが素材であるアルミニウムの需要増加につながっている。昨年までは増える需要に供給が追い付かなくなってきている状況にあった。 これは、後でも述べるアルミメジャーによる製錬所の閉鎖で需給バランスが崩れつつあることに原因があった。しかし、今年に入り中国における景気減

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