公益財団法人 軽金属奨学会 設立60年史
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80として誕生したAlcanは、2004年(平成16年)、フランスのNeuf Brisach(ヌフ・ブリザック)圧延工場とアメリカの航空機向けのRavenswood(ラベンズウッド)工場等は残して、利益率が低かった自社の大半の圧延事業を分社化した。 それによって誕生したのがNovelisだ。その後、Alcanは2007年(平成19年)にRio Tintoに買収され、Rio Tinto Alcanとなったが、同社はその後、同様に圧延部門を分離して2011年(平成23年)Constlliumが誕生した。結局、AlcanがNovelisにわたした上述の2圧延工場はConstlliumのものとなったわけである。6大メジャーのひとつであったReynoldsも1991年(平成3年)にアラバマ州のマッスルショールズ工場をWise Metalsに売却したが、これも2014年(平成26年)にConstlliumが吸収した。 圧延工場は今や自動車用パネルの生産に関心が移ってきており、世界における生産能力でみるとアメリカが最も大きくNovelisがニューヨーク州に持つOswego工場とAlcoaがアイオア州に持つDavenport工場の2工場で世界の4割近いシェアをもっている。なお、Alcoaはテネシー州にある缶材の生産ラインを自動車用板材(ABS:Automotive Body Sheet)のラインに切り替えており、今年完成の予定である。また、企業別でみると、Novelisは欧州でドイツやスイスにある圧延工場にABSのラインを保有しており、Alcoaを抜いてダントツである。 このABSライン増強に火をつけたのが、フォードのF-150というピックアップトラックである。欧米の自動車メーカーは厳しい燃費基準をクリアーするために、車の軽量化のため積極的にアルミニウムを採用しており、それを宣伝している。同社のホームページには、2015年モデルと2014年モデル(違いは古いモデルの荷台はスティール製だという点)を地面に垂直に立てて、砲丸やゴルフボールなどを荷台にぶつけ、アルミ合金製のほうが、へこみが少ないことをアピールしている。また、新型ジャガー「XF」は、ボディの75%がアルミということで、現行の型より190キロも軽くなり、イギリスの港湾で海の上に張ったロープの上を走るという前代未聞の映像を公開している。 日本と中国を除けばこのABSを生産できる企業としては、Novelis、Alcoa、Constellium、の他にはAleris、Hydro、AMAG等があり、これにサウジアラビアのMa’adenが今年加わる予定である。Alerisも、もともとリサイクルを専門として2004年(平成16年)に設立された企業だが、昨年リサイクルビジネス及び押出部門を売却し、板事業に特化し、ケンタッキー州にあるLewisport工場を増強している。なF-150の荷台に対する衝撃実験ビデオから(Ford社ホームページ)

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