87設立60周年記念特別寄稿教育研究資金・研究補助金成果報告書 援助を得て、アルミニウムやマグネシウム合金の高温クリープに関する研究を行ってきた。クリープ変形中のひずみ速度の変化に注目してその挙動を定量的に検討しようとするものである。当初、他の研究者によって報告されてきた定量化法の適用可能性を確認するところから始めた研究であったが、新たに提案したひずみ加速指数(Strain Acceleration and Transition Objective Index, SATO-Index)を用いると、多くのクリープ曲線で曲線全体を定量化する方法として広い可能性があることを見出すことができた。クリープ曲線の分類や、長時間強度の外挿方法について、さらに新しい提案を行うことができるようになりつつある。研究資金を含む資源の乏しい中、研究の基本的なアイディアを種として一歩ずつ研究を進めることができたことは、研究補助金・教育研究資金のご支援を受けることができたところに礎がある。ご援助に改めて感謝申し上げる。クリープ曲線形状の 定量評価と寿命予測弘前大学 教授佐藤 裕之 Al-Zn-Mg系合金は水素脆化を起こしやすいが、その機構はまだ解明されていない。そこでAl-5.8%Zn-2.4%Mg合金の1mm厚さのT6調質板材に対して、3点曲げにより0.2%耐力の9割の応力を負荷した状態で、圧縮面から陰極電解法により水素をチャージした後室温で24h保持し、引張面側で水素マイクロプリント法(HMPT)により水素を可視化した。図1はその結果(HMPT/SEM像)である。粒界が太い白色の線状に観察され、局所組成分析したところ、銀粒子の列であることが分かった。負荷応力は巨視的には弾性範囲内であるが、粒界近傍の無析出帯で塑性変形が起こり、転位が試料表面に抜け、母相上の酸化膜が破壊され、水素が放出されたものと推察される。 筆者はこれまで約20年にわたり、公益財団法人軽金属奨学会から、研究補助金、課題研究助成、教育研究資金の形で経済的にご支援いただいてきました。そして本研究成果をはじめ、多くの成果を上げることができました。これもひとえに同会からのご支援の賜物であり、ここに厚く御礼申し上げます。また同会の創立60周年をお祝い申し上げますとともに、今後のますますのご発展、ならびにそれにより軽金属研究がさらに盛んになることをお祈り致します。7000系アルミニウム合金における 水素挙動の解析茨城大学 教授伊藤 吾朗図ひずみ加速指数を用いて外挿(再構成)したクリープ曲線の例。クリープ曲線の大部分を少数のパラメータによって定量化できることを明らかにした。図1試料板に3点曲げにより0.2%耐力の9割の応力を負荷した状態で、圧縮面から陰極水素チャージし、24h室温保持した試料の引張側でのHMPT/SEM像。
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