公益財団法人 軽金属奨学会 設立60年史
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92設立60周年記念特別寄稿海外交流補助金報告書 The World Conference on Titaniumは、チタンに特化した最も歴史ある国際会議の一つであり、1968年より4年ごとに開催されている。今回は13回目となる会であり、米国サンディエゴが開催地であった。英国、米国、独立国家共同体(CIS)、日本、ドイツ、フランス、中国といった主要チタン生産国を中心に世界各国から研究者や技術者が一堂に会し、8月16日から20日までの5日間、製錬・加工・応用などチタンに関する幅広い分野について、最新の研究開発の紹介と意見交換が行われた。 報告者は、製錬技術に関するセッションである“Extraction and Powder Production”において、報告者らが開発した環境調和性に優れたチタンスクラッフのリサイクル法について講演を行った。世界の第一線で活躍する研究者・技術者らに、自身の研究内容を知ってもらうとともに、彼らから様々な意見・アドバイスを頂き、今後の研究開発に向けて大きな刺激と新たな視点を得ることができた。 本国際会議への参加によって、国内外のチタン関係者と新たなネットワークを造ることができたことも大きな成果である。また、本国際会議を通じて、加工や応用も含めたチタンの研究開発全体に関する最新のトレンドを知ることができたことも、自身にとって大変有意義であった。特に、新製錬法の研究開発や、リサイクルの現状、チタン生産量の増加が著しい中国の状況に関する講演は興味深かった。 今回の成果を元に、よりインパクトのある研究を展開できるよう努力する所存である。海外交流補助金という形で、有意義な経験を与えていただいたことに心よりお礼申し上げる。 本国際会議では、冷間加工を用いたアルミニウム合金の特性改善に関する研究成果の発表、ならびに軽金属材料の研究全般にわたる国際的な進展に関する情報収集を行った。参加した国際会議は、韓国の材料科学分野の多岐に渡る最新のトピックスをターゲットとしており、軽金属材料に関わる研究発表も多数あった。Biomedical Engineering、 Chemical Engineering、Civil Engineering、Electrical and Electronic Engineering、Environmental Science、Fundamental and Applied Sciences、Material Science and Engineering、Mechanical Engineeringといった11セッションに分かれて会議が進行し、集中した議論がなされるようポスターセッションも時間で区切って細分化されていたのが印象的であった(添付1参照)。筆者はMaterial Science and Engineeringのセッションで、「Atom probe tomography of the heterogeneous formation of nanoclusters in a cold rolled 6000 series aluminum alloy」の題目で研究発表を行った(添付2参照)。時効初期に形成するナノクラスタの構造・形成挙動をアトムプロープトモグラフイーを活用して解析した成果は、注目度が高く、解析方法やさらなる構造解析の深化について議論が白熱した。発表に対して、冷間圧延を用いた加工によるナノクラスタの改変についての質問が多数あり、新たな組織制御の可能性について多くの研究者と議論することができた。 1月9日には、The University of Nottingham のAssociate ProfessorであるJerey F. Webbによる基調講演が行われ、金属材料の電気的特性のモデリングについて最新の動向をふまえた話があった。筆者はMaterial Science and EngineeringおよびEnvironmental Scienceの両セッションの発表を主に聴講し、アルミニウム合金・マグネシウム合金を初めとする軽量化材料の開発動向に関する知見を大いに深めることができた。【研究集会名】  Seoul International Conference on Engineering and Applied Science (SICEAS 2105)【開催期間】平成27年1月8日〜10日 【開催地】韓国、ソウル【開催規模】(参加国数)18 (参加人数)300【研究集会名】  The 13th World Conference on Titanium(Ti-2015)【開催期間】平成27年8月16日〜20日 【開催地】San Diego, USA【開催規模】(参加国数)26  (参加人数)約1100名(講演論文の著者数(共著者含む)) 芝浦工業大学工学部材料工学科 助教芹澤 愛 東京大学 生産技術研究所 助教谷ノ内 勇樹添付1 ポスター会場添付2 発表風景

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