第8回 研究成果発表会
公益財団法人軽金属奨学会
第8回
2024年12月23日(月)
第8回
統合的先端研究成果発表会
開催日2024年12月23日(月)
「第8回統合的先端研究発表会」へ多数のご参加をいただき誠にありがとうございました。(出席者約90名)
おかげさまで盛況に開催することができました。
おかげさまで盛況に開催することができました。
プログラム
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研究テーマの今後の思い |
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高田 尚記 (名古屋大学 大学院工学研究科 准教授) 私は、8年前に同研究室の小橋眞教授とともにレーザ粉末床溶融結合(L-PBF)法で製造したアルミニウム(Al)合金の研究を始める機会を頂きました。これまで古典的な製造法による材料しか扱ってこなかったため、「金属3Dプリンタ」の造形体に非常に新鮮な魅力を感じ、わくわくしながら組織観察に取り組んだことを覚えています。研究を進めていくうちに、何故Al合金造形体が砂型鋳造やダイキャスト材の1.5~2倍もの強度を有するのか疑問を持ち始めました。単純な合金組成であるため,想定される強化機構は限られているためです。当時、その理由は「レーザ照射による局所加熱・急冷凝固にて生成する微細組織形態が高強度化をもたらす」と専門家によって説明されていました。しかし,Al合金における結晶粒微細化強化や共晶Si粒子による分散強化では説明できず、腑に落ちないままでありました。従来の材料とは異なる強化機構が作用しているのでは?と妄想していました。その妄想が、この統合的先端研究の着想です。この研究を通して、足立先生と宮嶋先生の助けを借りながら、自分なりにその答えに迫れたのではと思っています。今後は、その理解に基づき、L-PBF法が生み出す組織の特徴を活かした合金設計に取り組んでいきたいと思っています。今後ともご支援頂きますよう、よろしくお願い申し上げます。 |
足立 大樹 (兵庫県立大学 大学院工学研究科 教授) はじめに本研究に興味を持ったのは、積層造形ままのAl-Si合金が非常に高い加工硬化能を有していることを知った時である。通常、アルミニウム合金は加工硬化能が低く、結晶粒微細化などにより高強度化すると早期に塑性不安定性を示し、均一伸びが低下する。本合金の高い加工硬化能がどのような微細組織因子により生じているのかを明らかにすれば、他の合金系においても高い加工硬化能を付与し、高強度高延性アルミニウム合金を得るための指針となりうる。本研究において、SPring-8放射光を用いた引張変形中のIn-situ XRD測定や、ガンドルフィ光学系を用いた測定を行うことにより、各相の強度への寄与を分解でき、Siの塑性変形が示唆される結果が得られた時は非常に興奮をおぼえた。今後はマクロな平均情報が得られるXRD測定だけでなく、ミクロな情報が得られる顕微鏡観察も併用することによって、複数の相を有するアルミニウム合金の変形挙動をより詳細に考察していきたい。 |
宮嶋 陽司 (金沢大学 理工研究域機械工学系 准教授) 本研究で扱った材料は、レーザー粉末床溶融法 (L-PBF) を用いて作製したアルミニウム合金であり、レーザーによる溶融後に急冷されている。そのため、固溶原子が室温における固溶限以上溶け込んでいる、力学試験を実施可能なサイズのバルクの過飽和固溶体である。実際、TEM/EDS測定によって得られていた固溶元素濃度が、電気抵抗率測定から推察される結果と一致した。電気抵抗率測定は、TEM観察のような組織観察と比較すると、mm3オーダーの比較的大きい体積全体の平均値としての情報が得られることからも、バルクの過飽和固溶体が実現していることが分かった。その様なバルクサイズの過飽和固溶体アルミニウム合金も、転位を介した塑性変形が起こっており、塑性変形の進展に伴い転位密度が上昇することが示唆された。将来的には、L-PBFまま材に存在するとされる非平衡相やクラスター等の検出と,それらが力学特性に与える影響を解明する必要があると考えている。 |
袴田 昌高 (京都大学 大学院エネルギー科学研究科 エネルギー応用科学専攻 准教授) もともと表面の被覆処理であったメッキを接合に用いるというアイディアは、突拍子のない、チャレンジングなものであると今でも考えている。過去にメッキ金属の力学特性研究をした経験もあり、困難さを予想・痛感していたが、チーム研究を支援いただき、条件により母材強度と同等の高い接合強度を実現、また接合対象材料を複数の炭素繊維強化プラスチックへ拡充できたことは、材料研究者としてよいチャンスであった。また、本実験系では不可避に異種接合となるが、異種接合で必ず問題となる腐食性の評価にトライできたことも大きい。アルミニウムの陽極酸化被膜とメッキとが良好に複合化して高強度の接合となったケースは幸運であったが、電子顕微鏡観察でその幸運を実感しつつつかむことができたのも本助成のおかげでもあり、支援に感謝申し上げる。学術/実用面で不足する点は散在するが、今回の成果を活かして今後も本テーマに取り組んでいきたい。 |
中野 裕美 (豊橋技術科学大学 元教育研究基盤センター 教授) 2024年3月末で定年退職をしたが、現在も大学にはシニア研究員として在籍し、企業の非常勤顧問としても、セラミックス材料研究に関わっている。今回のプロジェクトでは、異種材料の新たな接合技術に取り組み、金属材料の専門家たちとミーティングを重ね、私は、透過型電子顕微鏡(TEM)でナノレベルの微構造を観察し、界面の接合メカニズムを解明する役割を担った。TEM観察用の薄片試料の出来や観察技術が、良質なデータ取得に大きく影響するが、過去に、コールドスプレー法という異種材料接合の研究に関わった経験があり、その時の知識や観察経験が生かされた。いくつになっても、新しい技術を学ぶことは面白く、今回のプロジェクトで得られた知識と経験は、分野を超えた材料の技術開発等にも広く応用していきたいと考えている。 |
千野 靖正 (産業技術総合研究所 材料・科学領域研究企画室 研究企画室長) 本研究開発では、京都大学(袴田准教授)にて作製されたメッキ接合されたアルミ合金-アルミ合金、アルミ合金-炭素繊維強化プラスチック(CFRP)の微視的組織評価および腐食性評価を担当した。これまで、もっぱらマグネシウム合金を始めとする軽金属の高性能化およびその特性評価を専門としてきた私にとっては、特にCFRPを含めたマルチマテリアル体を評価する機会を得たことは、新しい研究領域を知る大変良い機会となった。本研究開発終了後も、軽金属と各種材料のマルチマテリアル体の開発・評価に積極的に関わって行きたいと考えている。なお、上記の微視的組織評価および腐食性評価は、申請者が所属した研究グループ(マルチマテリアル研究部門 軽量金属設計グループ)の研究者と共同で推進した。ここで謹んで謝意を表したい。 |